代々木八幡公衆トイレ|THE TOKYO TOILET
伊東豊雄氏が設計した「森のキノコ」型のユニバーサル空間
代々木八幡公衆トイレは、日本を代表する建築家・伊東豊雄氏が手がけた、背後に広がる森から誕生したかのようなキノコ型の公衆トイレです。事前調査で「キノコ型のトイレ」という特徴を知っていたので、遠くからでもすぐに見つけることができました。
交通量の多い山手通り沿いに位置しながら、かつての暗く入りにくい印象を完全に払拭したそうです。3つの円柱状の個室を独立して配置することで、行き止まりのない高い防犯性を実現し、さらにすべての個室にあらゆる利用者をサポートする機能を分散させた、優しさに満ちた先進的なユニバーサル空間となっています。
私は昔のトイレを知らないのですが、背景に豊かな緑や歴史ある深い森があるというのは、昼間はとても気持ちが良いものです。しかしその一方で、夜間や人通りの少ない時間帯になると、生い茂る木々が落とす深い影のせいで「周囲から死角になっていて、なんとなく怖いな……」と、利用を少し敬遠してしまうかもしれませんね。特に、山手通りのような賑やかな大通りに面していながら、一歩敷地に入ると急に薄暗くなるような場所であれば、なおさら女性や子ども連れの方は入るのに勇気が必要だったはずです。
800年以上の歴史を紡ぐ代々木八幡宮の深い森と、都会の喧騒が隣り合う三角形の変形敷地。この場所で伊東氏が目指したのは、周囲の環境から切り離された冷たい施設ではなく、「自然の中にそのままいるようで、利用者が緊張せずに心地よく過ごせる場所」でした。
大地からむくむくと生えてきたような形状で、ダークブラウンからオフホワイトへと上に向かって空へ抜けていくモザイクタイルの美しいグラデーションは、大地のエネルギーと生命力を視覚的に表現しています。
これまで1箇所に集中しがちだった乳幼児連れや高齢者向けの設備を、3つの個室それぞれに標準装備。どの個室を選んでも多様なニーズに対応できるため、利用者の待ち時間を減らす優しい仕組みが整えられています。さらに、円柱形の形状は視線が自然に抜け、死角を生まないため、落書きや犯罪を抑止する環境配慮も徹底されています。
単に衛生的なだけでなく、大自然のエネルギーを感じさせるデザインで地域住民を温かく迎え入れるこの施設。今回は、森のキノコさながらの愛らしい姿の裏に、計算し尽くされた安全対策と、誰もが等しく恩恵を受けられるバリアフリー仕様が詰まった「代々木八幡公衆トイレ」の魅力をレポートします。
代々木八幡公衆トイレの写真

外観

外観

ピクトグラム

ピクトグラム

トイレ

洗面台
基本情報
| 住所 | 〒151-0053 東京都渋谷区代々木5丁目1−2 |
| デザイン | 伊東豊雄 |
| 施工期間 | 2020年10月〜2021年7月 |
| 設計・施工 | 大和ハウス工業 |
| 構造 | 鉄筋コンクリート造 |
| 建築面積 | 17.46m2 |
| 延床面積 | 17.46m2 |